バイトでの帰り道、駅前で三人組がギターを片手に酔っ払っていた。
「お兄ちゃん一曲聴いてってくれやー!!」
最悪だ。俺はストリートライブっていうのが好きじゃなくて、しかも酔っ払ってるし、と思いながら通り過ぎようとしたんだけど、どうやらただ単に飲んでギターを弾いて好きな歌を歌ってるだけらしい。その人たちに言われるがままその場に座って色んな話をした。話を聞くと岡山から出てきた人達で一人が居酒屋のマスターらしい。東京の人は冷たいと言っていた。よく聴く台詞だし「そんな事はねぇだろ」と前々から思っていた。でもね、その人たちが言うと凄く真実味があって・・・そのくらい暖かい人たちだった。関西弁を話すと怖がられたりするらしい。東京に来てから友達が出来ないって言っていた。でも話し方が荒く聞こえるだけで全然怖い人たちじゃなくて話してて凄く居心地が良かった。多分寂しくてああやって目立つ場所で酒を飲んで大声で歌っていたんだと思う。これが歌の本質なのかもしれないと思った。そして最後に三人で歌ってくれたブルーハーツの青空は痛いくらいに暖かくて・・・俺が酔っ払っていたら泣いていたと思う。もう最後にはその人たちの顔を見てるだけで嬉しい気分になって思わず番号まで交換してしまった。東京に育った俺には新鮮な出会い、彼等の数少ない友達の一人になりたいと思った。
結局最後は警察官がきて止められたのだが、俺は近々その飲み屋に足を運ぶだろう。そして今度は一緒に青空を歌おうと思う。
アサヒナ